NOBLE MAMA RECORD による「Romancing mika」全曲レヴュー

『Romancing mika/東京マリー』

多重録音卓越POP、東京マリーのセカンドアルバム。
いきなりクライマックスを冒頭にぶつけ、さっと暗転。
そこから時間をさかのぼり、冒頭シーンへの過程を見せてゆく演劇のように、 このアルバムは進行する。
全編貫くねじれて疾走するギターと真っすぐなストリングスの妙は、 恋愛と哲学の織りなす格闘の様相。
夢のような恋愛と、恋愛のような哲学。
その時の気持ちだけが確かな二人の物語、 このアルバムは現在なのか過去なのか。 本気のウソツキ
東京マリーの言葉の世界は、 聴く者の恋愛体質と同期して華麗なマルチエンディングを迎えるだろう。

『あシューティングスター』
一曲目でありつつ、このアルバム最大の名シーンとして星空のパノラマを展開する。静寂にじっと星空を見上げて、静止しているのに、心の中は興奮が止まらない。子供の時にはこの気持ちがなんだか説明できない、大人になったらこんな気持ちになれない。ドラマチックな曲展開でリズムが心をせき立てる。

『Magical違う言語girl』
世間のような騒がしさと、世間ずれした空っぽの頭が、変質的な手法で融合してゆく。前半に投げかけたヒントから、想像の余韻をグイグイ引っ張ってゆくように計算された間奏パートに、東京マリーの脳内への侵入の手口が凝縮されている。

『トーキョータワーフォーライフ』
詞曲ともにファーストアルバムからの流れが色濃く出た定番曲。町を歩きながら思いついたような恋愛観から、君を思う現実の気持ちが充満してゆく。なぜ数曲に分けなかったの?ってもったいないくらい複合的に変わってゆくきれいなメロディー。切ないドライブ感にあふれている。

『ミラノ』
グロッケンやマリンバの小さなかわいい音がきらきらと散らされて、落ち着いた恋のひとときを飾る。蟹田って何県?

『Sexy Satellite』
いろんな意味で畳み掛ける怒濤の気持ち悪さ。いろんな意味で。

『アンチ・ミュージック』
ギターポップいっちょ上がり!的な、スコーンと飛び抜けた気持ちよさ。スタジオMixの才能とLiveの余裕、両方を感じさせる。

『貴女方にはセクシーの才能がある』
この手のキャッチなタイトルが、ドキュンと飛び出すのが楽しみ。前作では『殴ったあとはいつも優しい』ってタイトルの曲があって、その響きだけで勝利は決定されていた。

『フォーエヴァーね』
この曲も甘く輝く時間を過ごさせる美しいシーン描写に満ちている。夏の宵花火。夢に見たような恋の時間。くすぐるようなパンニングの揺さぶりや多重コーラスのマジックが炸裂。

『夢の関係』
「お前の絶対軸ってさ、彼女だけだよな」。時間も空間も超えるテンポのいい大好き宣言。

『happy endings』
我が国、日本が自由恋愛から結婚できるようになったのは、たかだか60年くらいなのだが。現代に生きる者の「今が良ければ全部良し」のエネルギーに満ちている。1000000年も前から、世界が幸福であったようなトキメキが、めくるめく長編を包んでいる。

『宇宙のままでいたいと言っても』
星降るような遠くキラキラしたイントロから始まるこのアルバムの物語のラストシーン。現実がリアルすぎて客観的に浮遊してしまう視点。スペイシーなクライマックスは、ちょうど一曲目『あシューティングスター』の胸いっぱいの気持ちへ輪になってつながっている。

『そっか、マリー』
暗闇のチューブの中を移動するかのような乗り物感。柔軟な弦楽器とアシッドなギターが手を取り、 懐古的な笛の音と突き進もうとするドラムの上で踊る。 『マリー』自身をタイトルにした「Romancing mika」エンディングテーマ。 スタッフロールの流れる中、これまでの夢のような、ハッピーとアンハッピー がフラッシュバック。これまでの楽曲、美しい世界を弾丸にして、 恐怖の正体へ銃口を突きつける。

トウキョー003 (NOBLE MAMA RECORD)